2026年7月9日更新
近年、ゲリラ豪雨や台風による大雨で、道路冠水や床上・床下浸水などの被害が発生しています。大雨による被害というと、川の氾濫や道路から流れ込む雨水をイメージしがちですが、建物まわりでは「排水管からの逆流」にも注意が必要です。豪雨時には、下水道管内の水位が上昇し、宅地内の排水管を通って下水が逆流することがあります。
この記事では、排水の逆流を防ぐための「逆流防止弁」について、仕組みや選び方、弊社取扱商品の種類を紹介します。
目次
1. 逆流防止弁とは
逆流防止弁とは、水や空気などの流れを一方向に保ち、反対方向への流れを防ぐための弁です。「チャッキ弁」「逆止弁」と呼ばれることもあります。海外では「チェックバルブ」と呼ばれます。
逆流防止弁には、水の逆流を防ぐものだけでなく、空気の逆流を防ぐものもあります。この記事では、排水用の逆流防止弁について説明します。
2. 排水の逆流が発生する原因
排水設備は、通常、水が一方向へ流れるように設計されています。しかし、排水先の水位上昇や配管の詰まり、ポンプ停止などが起こると、本来とは逆の向きに水が押し戻されることがあります。これが「逆流」です。
逆流が発生する主な原因には、次のようなものがあります。
- 大雨や台風で排水先の水位が上がる
- 下水道や排水路の排水能力を超える雨水が流れ込む
- 排水管が詰まる
- ポンプなどの設備が停止する
- 水槽や配管内の水位差によって流れの向きが変わる
普段は問題なく流れている排水でも、大雨や設備トラブルなどによって逆方向へ押し戻されることがあります。特に、排水先の水位が上がったときには、建物側の排水口や配管から汚水・排水が戻るリスクがあります。
3. 豪雨・台風で下水が逆流する仕組み
ゲリラ豪雨や台風では、短時間に大量の雨が降ります。下水道や排水路に大量の雨水が一気に流れ込むと、排水が追いつかなくなり、下水道管内の水位が上昇します。
下水道管内の水位が宅地内の排水設備より高くなると、本来は外へ流れるはずの排水が、建物側へ押し戻されます。その結果、トイレ、浴室、キッチン、洗面所、屋外排水ますなどから汚水や排水があふれることがあります。
道路側では、マンホールから水が噴き出すこともあります。ただし、マンホールからの噴出や道路冠水そのものは、建物側に設置する逆流防止弁で防ぐものではありません。逆流防止弁が役割を発揮するのは、排水管を通じて建物側へ戻ってくる水を止める場面です。
土地が低い場所にある建物、道路より低い位置に排水口がある建物、地下室・半地下・地下駐車場のある建物では、排水管からの逆流対策が特に重要です。
4. 大阪市も注意喚起している「宅地内への下水逆流」
大阪市は、建築物の施主・設計者向けに、大雨による浸水への備えを案内しています。その中で、豪雨時には短時間で大量の雨水が下水道管に流れ込み、下水道管内の水位が上昇すると説明しています。そして、下水が宅地内の排水管を通って逆流し、排水溝などから下水が噴出するおそれがあると案内しています。
また、半地下を含む地下室や地下駐車場、地下にある設備などでは、水害に対する対応として、逆流防止弁の設置などが挙げられています。
【参考】
大阪市「大阪市内における建築物の施主・設計者のみなさまへ」
https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000294190.html
2026年6月26日の大雨では、大阪市内で床上浸水、床下浸水、道路冠水などの被害が発生しました。この被害のすべてが排水管からの逆流によるものではありません。しかし、都市部でも大雨による浸水被害が現実に発生していること、そして大阪市が宅地内への下水逆流を注意喚起していることから、建物側での排水逆流対策は重要です。
【参考】
大阪市「大雨に伴う大阪市の被害発生状況について」
https://www.city.osaka.lg.jp/kikikanrishitsu/page/0000682417.html
逆流防止弁は、公共下水道や道路冠水そのものを止める製品ではありません。しかし、排水管を通じて建物側へ戻ってくる汚水・排水を防ぐためには有効な設備です。
5. 逆流防止弁で防げること・防げないこと
逆流防止弁は、排水管からの逆流を防ぐための製品です。一方で、すべての浸水被害を防ぐものではありません。設置目的を正しく理解しておくことが大切です。
5-1. 逆流防止弁で防げること
逆流防止弁で防げるのは、主に排水管を通じて逆方向へ戻ってくる水です。たとえば、次のような対策に使用されます。
- 下水道側から宅地内排水管への逆流を防ぐ
- 排水口から汚水や排水が噴き出すことを防ぐ
- 浄化槽や排水設備内への逆流を防ぐ
- 配管内への害虫・害獣の侵入リスクを下げる
- 排水管からの臭気戻りを緩和する
5-2. 逆流防止弁では防げないこと
逆流防止弁では、次のような被害は防げません。
- 道路冠水そのもの
- 河川や用水路からあふれた水の流入
- 玄関や窓、換気口などから入る雨水
- 公共下水道施設の故障や停止
- マンホールからの噴出そのもの
- 設置位置や向きが合っていない配管での逆流
逆流防止弁は、建物や敷地内の排水管に設置して、排水管を通じた逆流を防ぐための設備です。浸水対策全体としては、止水板、土のう、排水ポンプ、排水ますの清掃、ハザードマップの確認などとあわせて備えることが重要です。
6. フラップ式逆流防止弁のしくみ
逆流防止弁は、水が一方向にだけ流れるようにするための装置です。排水が正しい方向へ流れるときは弁が開き、反対方向から水が押し戻されると弁が閉じます。弊社で取り扱っている排水用の逆流防止弁には、主に「フラップ式」のものがあります。
6-1. フラップ式とは?
フラップ式は、弁の内部にフタのような部品が付いている構造です。水が正しい方向から流れてきたときだけフラップが開きます。反対側から水が押し戻されると、フラップが閉じて逆流を防ぎます。
片開きのドアのように、進行方向には開き、戻ろうとすると閉まるイメージです。
左:フラップが開いた状態。右:フラップが閉じた状態。片側だけに開く仕組み。
フラップ式は構造がシンプルで、電気を使わずに作動します。そのため、停電時やポンプ停止時でも、排水の逆流を防ぐための設備として使用できます。ただし、フラップ部分にゴミや異物が挟まると、弁が閉まりきらないことがあります。設置後も定期的な点検や清掃を行うことが大切です。
7. 逆流防止弁の選び方
逆流防止弁を選ぶときは、価格やサイズだけで選ぶのではなく、設置する目的と配管条件を確認する必要があります。特に重要なのは、次の3点です。
- 水の流れる向き
- 配管サイズ、管種
- 設置場所に合う形状
7-1. 水の流れる向きを確認する
逆流防止弁を選ぶときに最も重要なのが、水の流れる向きです。
排水は通常、建物側から下水道や排水先へ向かって流れます。豪雨時に下水道側から建物側へ押し戻される水を防ぐ場合は、その逆方向の流れを止める必要があります。
弊社のパイプ差し込みタイプには、「順方向」と「逆方向」があります。どちらも逆流を防ぐための製品ですが、設置する場所と止めたい水の向きによって選ぶタイプが変わります。「外部・下水側から宅地内や建物側へ戻ってくる排水を止めたい」という用途では、逆方向タイプが該当するケースが多くなります。一方で、流入口側に設置して、配管内や浄化槽内への戻りを防ぎたい場合には、順方向タイプを使用します。
取付け方向を誤ると、本来の機能を発揮できません。設置前に、通常時の水の流れと、止めたい逆流の向きを必ず確認してください。
7-2. 配管サイズ・管種に合うものを選ぶ
逆流防止弁は、配管サイズに合ったものを選ぶ必要があります。サイズが合っていないと、差し込みや固定ができないだけでなく、すき間から漏れたり、流れを妨げたりする原因になります。
また、配管の種類によっても適合する製品が異なります。VU管、VP管、フランジ接続、ステンレス配管など、設置する配管の種類に合わせて選定してください。
不明な場合は、配管の外径・内径、接続方式、設置場所の写真などを確認したうえで、メーカーや施工業者へ相談することをおすすめします。
7-3. 設置場所に合う形状を選ぶ
逆流防止弁には、パイプに差し込むタイプ、フランジ接続タイプ、縦向き用など、複数の形状があります。ここでは、弊社で取り扱っている主な逆流防止弁を紹介します。
逆流防止弁(逆方向)
本製品に接着剤を塗布して流出口に差し込みます。豪雨時などに外部・排水先側から戻ってくる水を止めたい場合に使用します。排水先の水位上昇によって、建物側・宅地内側へ水が押し戻されるリスクがある場所では、逆流を止める向きに注意して選定してください。配管内や浄化槽内への逆流防止、害虫・害獣の侵入リスク低減、臭気緩和にも使用できます。


逆流防止弁(順方向)
本製品に接着剤を塗布して流入口に差し込みます。流入口側で逆流を防ぎたい場合に使用するタイプです。配管内や浄化槽内への逆流防止、害虫・害獣の侵入リスク低減、臭気緩和に使用できます。順方向・逆方向は、設置する位置と水を止めたい向きによって使い分けます。


縦向き用逆流防止弁
縦方向の配管や水位上昇に対応するためのタイプです。弁体にフロートが付いており、水位の上昇に合わせてフロートが上がり、弁を閉じる構造です。横引き配管に設置するタイプとは構造が異なるため、設置場所に合わせて選定してください。


フランジタイプ用逆流防止弁
フランジ接続の配管に使用する逆流防止弁です。フランジ式(JIS 5K)のため取り外しができ、点検やメンテナンスを行いやすい接続方式です。設備配管や施設内配管など、メンテナンス性を重視する場所に向いています。ANSI/BS、DIN規格もあります。


逆流防止弁(SUS製JIS5Kフランジ接続タイプ)
ステンレス製の逆流防止弁です。樹脂製よりも堅牢性を重視したい場所や、腐食に配慮したい設備で使用します。シンプルな構造のため施工・メンテナンスがしやすく、フランジ接続のため施工後の点検にも対応しやすい構造です。
8. 取付け時の注意点
逆流防止弁は、配管条件に合った製品を選んだうえで、正しく施工することが重要です。特に、パイプに差し込むタイプの逆流防止弁は、必ず塩ビ用の接着剤を使用して取り付けてください。接着が不十分だったり、逆流防止弁とパイプの間に隙間ができたりすると、隙間から水が回り込み、逆流防止弁の機能を十分に発揮できないおそれがあります。
取付け時には、次の点を確認してください。
- 配管サイズ、管種に合う製品を使用する
- パイプ差し込みタイプは、必ず塩ビ用の接着剤を使用する
- 逆流防止弁とパイプの間に隙間ができないように確実に接着する
- フラップや弁体の動きを妨げる異物がないか確認する
- 点検や清掃ができる場所に設置する
- 屋外や水まわりなど、設置環境に合った材質・形状を選ぶ
逆流防止弁は排水の逆流を抑えるための製品であり、完全止水を保証するものではありません。詳細な仕様は各商品ページをご確認ください。取付けに不安がある場合は、施工業者やメーカーへ相談してください。
9. 弊社の逆流防止弁のご紹介
弊社では、排水用の逆流防止弁を各種取り扱っています。パイプに差し込むタイプの順方向・逆方向のほか、フランジタイプ、SUS製フランジ接続タイプ、縦向き用逆流防止弁など、設置場所や配管条件に合わせて選べる製品をご用意しています。
図面や取扱説明書、使用イメージなども商品ページでご覧いただけます。設置場所、配管サイズ、水の流れる向きなどをご確認のうえ、用途に合う製品をお選びください。
弊社取り扱い逆流防止弁はこちら
https://kansaikako-onlineshop.com/list.php?b_id=10
お問い合わせ先
ご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
https://kansaikako-onlineshop.com/contact.php
記事作成:関西化工株式会社
関西化工株式会社は、浄化槽関連部品、排水処理設備向け部品、各種逆流防止弁を取り扱うメーカーです。
本記事では、排水設備における逆流防止弁の基本的な役割と選び方を紹介しています。
参考文献
- 大阪市「大雨に伴う大阪市の被害発生状況について」
https://www.city.osaka.lg.jp/kikikanrishitsu/page/0000682417.html - 大阪市「大阪市内における建築物の施主・設計者のみなさまへ」
https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000294190.html
