SUSとは?ステンレス鋼の特徴と水処理設備で使われる理由

SUSという素材の名前を聞いたことがありますか?

 

「初めて聞いた」という方も、「SUSはステンレス鋼のこと」と聞けば、ぐっと身近に感じるのではないでしょうか。

 

ステンレスは、キッチン用品やアクセサリー、建築金物などに使われる身近な素材です。一方、水処理設備や浄化槽の現場でも、SUSはさまざまな部品に使われています。

 

この記事では、SUSの基本的な性質や種類、錆びにくい仕組み、水処理設備で使われる理由、他素材との使い分け、扱う際の注意点まで順に説明します。

 

目次

 

1. SUSとは何か

 

1-1. SUSはステンレス鋼のこと

 

SUSは、JISでステンレス鋼の鋼種を表す際に使われている記号です。SUS304、SUS316、SUS430などのように表記されます。

 

ステンレス鋼は、鉄を主成分としてクロムなどを加え、耐食性を高めた合金鋼です。一般には、クロムを10.5%以上含む鋼がステンレス鋼とされています。
普段は「ステンレス」とひとまとめに呼ばれることが多いですが、実際には多くの種類があります。

 

含まれる元素や金属組織によって、耐食性、磁性、加工性なども異なります。
そのため、「SUS製」と書かれているだけでは、材料の性質をすべて判断することはできません。

 

【参考】
日本ステンレス協会「ステンレスと耐熱鋼の違いについて」
https://www.jssa.gr.jp/contents/faq-article/q2/

 

1-2. 身近な製品にも使われている

 

SUSは、特別な工業材料ではありません。

 

キッチンのシンクや包丁、スプーン、ボルトやナット、屋外の手すりなど、身の回りのさまざまな製品に使われています。

 

 

アクセサリーでも、サージカルステンレスを使用したピアスやネックレスを見かけます。

 

また、ステンレス鋼は手術器具などの医療分野や、食品設備などでも使用されています。
市販のアクセサリーに表示される「サージカルステンレス」と、医療機器として規格管理されたステンレスは同じ意味ではありませんが、サージカルステンレスは金属アレルギーを起こしにくい素材として、ピアスやネックレスなどにも広く使われています。

 

このように、ステンレスは生活用品から産業設備まで、非常に幅広い分野で使われています。

 

【参考】
U.S. Food and Drug Administration「ASTM F899-23 Standard Specification for Wrought Stainless Steels for Surgical Instruments」
https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfStandards/detail.cfm?standard__identification_no=45330

 

2. SUSはなぜ「錆びにくい」のか

 

2-1. クロムと不動態皮膜の仕組み

 

SUSの大きな特徴が耐食性です。

 

ステンレス鋼にはクロムが含まれています。このクロムが酸素と結びつくことで、表面に「不動態皮膜」と呼ばれる非常に薄い保護皮膜が形成されます。
不動態皮膜が金属表面を覆うことで、内部の金属と周囲の水分や酸素との反応が抑えられます。

 

一般的な鋼材では、塗装やめっきによって防錆する方法をとります。一方、SUSは材料に含まれるクロムによって表面に保護皮膜を作ります。

 

この仕組みが、SUSの耐食性を支えているのです。

 

2-2. 「錆びない」ではなく「錆びにくい」素材

 

ステンレスは一般の鋼よりも高い耐食性を持っています。

 

しかし、絶対に錆びない金属ではありません。

 

塩分や薬品、温度などの条件によっては、不動態皮膜が破壊されて腐食が進みます。
そのため、一概に「ステンレスだから錆びない」とは言えません。
使用環境に合ったSUSを選ぶことが重要です。

 

2-3. 不動態皮膜の自己再生とその限界

 

不動態皮膜は、表面の一部が傷ついても、酸素が存在する環境では再び形成されます。
この自己再生性も、SUSが耐食性を維持できる理由の一つです。

 

一方、塩化物などの影響によって不動態皮膜が局部的に破壊されると、孔食やすき間腐食が発生します。
SUSの「錆びにくさ」と「SUSでも腐食する」という二つの性質は、どちらも不動態皮膜と深く関係しているのです。

 

【参考】
日本ステンレス協会「ステンレスの耐食性と腐食現象について」
https://www.jssa.gr.jp/contents/faq-article/q8/

 

3. SUSの基本特性と種類の違い

 

3-1. 金属としての強度と耐久性

 

SUSは耐食性だけでなく、金属材料としての強度や耐熱性、加工性も持っています。

 

そのため、水に強い材料が必要な場所だけでなく、荷重を受ける部品や機械部品、構造部材にも使用されます。
現在、多くの水処理設備では、PVCやFRPなどの樹脂材料も多く使われていますが、強度や剛性、温度条件によってはSUSが選ばれることもあります。

 

耐食性と金属としての強度の両方が必要な場合は、SUSの方が適しているからです。

 

3-2. 代表的な鋼種:SUS304とSUS316

 

SUSには多くの鋼種があります。

 

代表的なものの一つがSUS304です。クロムとニッケルを含むオーステナイト系ステンレス鋼で、耐食性や加工性のバランスがよく、幅広い用途で使用されています。

 

SUS316は、クロムとニッケルに加えてモリブデンを含みます。SUS304よりも孔食などに対する耐食性が高く、塩化物の影響に強い素材です。

 

ただし、「SUS316の方が高性能だから、すべて316にすればよい」というものではありません。

 

水質、薬品、温度、加工方法、コストなどを確認し、必要な性能に合った鋼種を選びます。
また、SUS304LやSUS316Lの「L」はLow Carbonを意味します。炭素量を低くすることで、溶接部で問題になる粒界腐食への対策をしやすくした鋼種です。

 

【参考】
日本製鉄株式会社「ステンレス形鋼の特徴」
https://www.nipponsteel.com/product/stainless/list/stainless_steel_shapes/features/
日本ステンレス協会「JIS鋼種番号とSUS316LやSUS430Fなど鋼種記号の後ろについたアルファベットの意味」
https://www.jssa.gr.jp/contents/faq-article/q5/

 

3-3. SUSは種類によって磁性・加工性も異なる

 

「ステンレスは磁石につかない」と思われることがありますが、すべてのSUSが非磁性ではありません。
SUS304やSUS316などのオーステナイト系は基本的に非磁性です。一方、SUS430などのフェライト系や、SUS410などのマルテンサイト系は磁性を持ちます。

 

また、SUS304でも曲げやプレスなどの加工によって金属組織が変化し、磁性を持つことがあります。
加工のしやすさにも鋼種ごとの違いがあります。「SUSだから選ぶ」のではなく、「どのような用途にどのSUSを選ぶのか」を考えることが重要です。

 

前半で紹介したキッチン用品やアクセサリー、医療器具、食品設備でも、それぞれ求められる性能は異なります。水処理設備でも同じように、その場所で必要な性能に合わせて鋼種や材料を選びます。

 

【参考】
日本製鉄株式会社「ステンレスの製品FAQ」
https://www.nipponsteel.com/product/faq/stainless/

 

4. 水処理設備・浄化槽でSUSが使われる理由

 

4-1. 水分や湿気の多い環境で使いやすい

 

排水処理設備や浄化槽では、多くの部品が水、処理水、湿気、結露などにさらされます。
一般的な鋼材を使用する場合は、塗装やめっきなどによる防錆処理が必要です。防錆層が劣化すれば、補修も必要になります。

 

SUSは材料自体に高い耐食性があるため、水分や湿気の影響を受ける設備で使用されています。

 

ただし、水処理設備では、生活排水、工場排水、塩分を含む水、薬品を含む水など様々な水を扱うため、腐食条件が異なります。
そのため、水質や使用条件も鋼種を選定するうえで重要な条件になります。

 

【参考】
日本ステンレス協会「建築設備用ステンレス配管マニュアル」
https://www.jssa.gr.jp/greenpipe/wp-content/uploads/2025/07/manuals.01.pdf

 

4-2. 強度が必要な構造部材・機械部品に使える

 

水処理設備では、耐食性だけでなく強度が必要な部品もあります。例えば、機器を支える架台や固定金具、力が加わる弁や軸などです。こうした部品は、水や湿気にさらされながら荷重や振動も受けるため、腐食しにくさと金属としての強度の両方が求められます。

 

PVCやFRPなどの樹脂材料も水処理設備では多く使われていますが、強度や剛性、温度、摩耗などの条件によっては金属材料の方が適しています。特に、繰り返し荷重が加わる部品や、限られた寸法の中で強度を確保しなければならない部品では、SUSのような金属材料の特性が生かされます。

 

そのため水処理設備では、配管や槽などを樹脂材料で構成しながら、強度が必要な部品だけをSUSにするといった使い分けも行われています。

 

4-3. 水処理設備で使われる主なSUS部品

 

水処理設備では、し渣かご、スクリーン、ボルト・ナット、架台、手すり、弁、軸、配管部品などにSUSが使われています。同じSUS製部品でも求められる性能は異なり、水に常時触れる部品では耐食性、荷重を受ける部材では強度や剛性、弁やばねなどの機械部品では耐久性や弾性が重要になります。

 

例えば、し渣かごは自動スクリーンで除去したし渣を回収するため、水分を含んだし渣の重量を支えながら排水や湿気にさらされます。逆流防止弁は配管の一部として水に接触しながら、流れを制御するための形状と強度を保たなければなりません。

 

一方、製品全体をSUSで作る必要がない場合もあります。バイブレーションディフューザーでは本体にABS樹脂を使用し、弾性を必要とする板バネにSUS301を使用しています。このように、一つの製品の中でも部品ごとに必要な性能を分けて考え、材料を使い分けることができます。

 

逆流防止弁(SUS製JIS5Kフランジ接続タイプ)

水や湿気にさらされる配管部品として、耐食性と強度を生かしたオールステンレス製の逆流防止弁です。

URL:https://kansaikako-onlineshop.com/product.php?id=541

 

し渣かご

水に触れながら、回収したし渣の重量も受けるため、耐食性と強度を持つSUSを使用しています。

URL:https://kansaikako-onlineshop.com/product.php?id=525

 

バイブレーションディフューザー

ABS樹脂製の本体に、弾性と耐久性が必要な部分だけSUS301製の板バネを使用しています。

URL:https://kansaikako-onlineshop.com/product.php?id=393

 

5. SUSと他素材の使い分け

 

5-1. SSとの違い

 

SUSと同じ金属材料として比較されるのがSSです。SS400などの一般構造用圧延鋼材は、架台やフレーム、構造物などに広く使用されており、必要な強度を確保しやすく、SUSに比べて材料費を抑えやすいという特徴があります。

 

大きな違いは耐食性です。SSを水分や湿気にさらされる場所で使用する場合には、塗装やめっきなどで表面を保護します。適切に防錆処理を行えば水処理設備でも使用できますが、塗膜が傷んだり剥がれたりすると、その部分から鋼材の腐食が進むため、定期的な点検や補修が必要になります。

 

これに対してSUSは、材料に含まれるクロムによって不動態皮膜を形成するため、塗装を前提とせずに耐食性を確保できます。ただし、材料費や加工費は一般にSSより高くなります。

 

そのため、材料選定では初期費用だけでなく、設置後の維持管理まで含めて考えます。防錆処理を維持しやすい場所ではSSが合理的な場合があり、常時湿潤する場所や塗装・補修が難しい場所では、SUSを使用するメリットが大きくなります。

 

5-2. PVC・FRPとの違い

 

現在の水処理設備では、SUSだけでなくPVCやFRPも広く使用されています。いずれも水や腐食環境に対応するために使われる材料ですが、SUSが金属であるのに対して、PVCは熱可塑性樹脂、FRPは樹脂をガラス繊維などで補強した複合材料であり、それぞれ性質が異なります。

 

PVCは軽量で切断や接着がしやすく、配管や継手などに広く使用されています。金属のような赤錆を生じない点も水処理設備では大きな利点ですが、温度が上がると機械的性質が変化するため、使用温度や圧力を考慮する必要があります。また、薬品に対する耐性も薬品の種類や濃度によって異なります。

 

FRPは軽量で耐食性に優れ、槽、タンク、覆蓋、ダクト、カバーなど比較的大きな構造物にも使用できます。ただし、FRPの性能は使用する樹脂やガラス繊維の構成、積層方法などによって変わるため、「FRP」という材料名だけで強度や耐薬品性を判断することはできません。

 

SUSはPVCやFRPに比べて重量がありますが、金属として高い強度と剛性を持ち、曲げ、切削、溶接などによってさまざまな形状に加工できます。高い温度、荷重、振動、摺動などが関係する部品では、樹脂材料よりSUSが適することがあります。

 

耐薬品性についても、一つの素材がすべての環境で優れているわけではありません。何に触れるのかだけでなく、濃度、温度、pH、接触時間などを確認し、実際の使用条件に合わせて材料を選定します。

 

5-3. 使用環境・強度・重量・コストから選ぶ

 

水処理設備の材料を選ぶ際には、耐食性、強度、剛性、重量、温度、耐薬品性、加工性、施工方法、維持管理、コストなどを総合して考えます。同じ設備の中でも、槽、配管、架台、弁、散気装置、薬品配管では要求される性能が異なるため、一種類の材料だけですべてを作るのではなく、それぞれの場所に合った材料を組み合わせます。

 

素材 主な特徴 水処理設備で使われる主な場所 選定時に確認する主な条件
SUS 耐食性が高く、金属としての強度・剛性を持つ 弁、軸、架台、金具、かご、機械部品など 水質、塩化物、薬品、温度、荷重、鋼種、加工方法
SS 強度を確保しやすく、SUSより材料費を抑えやすい 架台、フレーム、構造部材など 防錆方法、腐食環境、点検・補修方法
PVC 軽量で施工しやすく、金属腐食を生じない 配管、継手、槽内配管、樹脂部品など 薬品、濃度、温度、圧力、荷重
FRP 軽量で耐食性が高く、大型形状にも対応しやすい 槽、タンク、覆蓋、ダクト、カバーなど 使用樹脂、薬品、温度、積層構成、強度

 

 

この比較からも分かるように、「どの素材が最も優れているか」を決めることが材料選定の目的ではありません。必要以上の性能を持つ材料を選べば設備費が上がり、反対に必要な性能を満たさない材料を選べば、早期の腐食や変形、補修につながります。

 

使用環境と必要な性能を整理し、その条件に合った材料を選ぶことが、水処理設備の耐久性とコストの両方を考えるうえで重要です。

 

6. SUSを扱うときの注意点

 

SUSは一般鋼に比べて高い耐食性を持っていますが、その耐食性は表面の不動態皮膜によって支えられています。そのため、SUSの腐食を考えるときには「ステンレスも錆びる」というだけではなく、不動態皮膜がどのような条件で不安定になり、どのような腐食が起こるのかまで理解する必要があります。

 

水処理設備では、水質や薬品だけでなく、温度、流速、付着物、部品の形状、異種金属との接触、加工や溶接によって生じる応力など、複数の条件が重なります。SUSでは材料表面全体が同じように腐食するとは限らず、局部的に進行する腐食が設備トラブルにつながることもあります。

 

6-1. 塩化物や薬品による腐食

 

SUSの耐食性を考えるうえで重要な腐食因子の一つが塩化物イオンです。通常、不動態皮膜は金属表面を安定して保護していますが、塩化物イオンが存在すると局部的に皮膜が破壊され、その部分から「孔食」や「すき間腐食」が進行します。

 

孔食は、不動態皮膜の一部が破壊され、点状または穴状に内部へ進む局部腐食です。表面から見える範囲が小さくても深さ方向へ進行するため、板材や配管では局部的な貫通につながります。一方、すき間腐食は、フランジ、ボルト締結部、ガスケットとの接触部、付着物の下など、液体が滞留しやすい狭い部分で発生します。すき間内部では酸素濃度などが周囲と異なる環境となり、不動態皮膜を維持しにくくなるためです。

 

SUS316はモリブデンを含むため、SUS304より孔食やすき間腐食に対する耐食性が高く、塩化物の影響に強い鋼種です。ただし、その耐食性にも限界があり、塩化物濃度や温度が高くなればSUS316でも腐食します。また、設備内部では水分の蒸発によって塩化物が濃縮したり、液が滞留した部分だけ局所的に腐食条件が厳しくなったりするため、平均的な水質だけで判断することはできません。

 

水処理設備で使用する次亜塩素酸ナトリウム、酸、アルカリなどの薬品についても同じです。薬品名だけではなく、濃度、液温、接触時間、混合される成分まで含めて材料への影響を確認し、条件によってはSUSではなくPVCやFRPなどを選定します。

 

また、SUSの腐食には、孔食のような局部腐食だけでなく「全面腐食」もあります。全面腐食は、不動態皮膜を安定して形成・維持できない環境で、金属表面全体の腐食が比較的均一に進む現象です。日本ステンレス協会では、塩酸、硫酸、りん酸、有機酸などの酸化力の弱い酸環境でみられる腐食形態として説明されています。

 

【参考】
日本ステンレス協会「ステンレスの耐食性と腐食現象について」
https://www.jssa.gr.jp/contents/faq-article/q8/
日本ステンレス協会「建築設備用ステンレス配管マニュアル」
https://www.jssa.gr.jp/greenpipe/wp-content/uploads/2025/07/manuals.01.pdf

 

6-2. もらいサビ・異種金属接触腐食

 

ステンレス表面に赤錆が見つかった場合でも、SUSそのものが最初から腐食したとは限りません。製作や施工の際に普通鋼の鉄粉などがSUS表面へ付着し、その鉄分が水分によって腐食することで、ステンレス表面に赤錆が発生する「もらいサビ」があります。

 

例えば、SUSの近くで普通鋼をグラインダー加工すると、飛散した鉄粉がSUS表面に付着します。また、普通鋼の加工に使用したワイヤーブラシや工具をSUSにも使用することで、表面へ鉄分が移ることもあります。水処理設備は水分や湿気が多いため、このような鉄粉を残すと錆が発生しやすくなります。そのため、加工場所や工具を分けること、付着した鉄粉を除去すること、SUS表面を清浄な状態に保つことが重要です。

 

さらに、水処理設備ではSUSだけで設備を構成することは少なく、SS、アルミニウム、銅合金など他の金属と接続されることがあります。異なる金属が水などの電解質中で電気的に接触すると、その金属間に電位差が生じ、電位の低い側の金属で腐食が促進される「異種金属接触腐食」が起こります。

 

この腐食は、金属の組み合わせだけでなく、接触する金属同士の面積比、液体の電気伝導度、温度、pH、溶存酸素などにも左右されます。特に、小さな面積の腐食しやすい金属が、大きな面積のSUSと接触している構造では、小さい側へ腐食が集中しやすくなります。

 

対策としては、絶縁ワッシャーや絶縁スリーブ、ガスケットなどを使用して異種金属同士を電気的に分離する方法があります。配管、架台、ボルト、バルブ、支持金具など複数の材料を組み合わせる水処理設備では、SUS部品だけを見るのではなく、接続される周囲の材料まで確認する必要があります。

 

【参考】
日本ステンレス協会「ステンレスと異種金属との接触についての問題点」
https://www.jssa.gr.jp/contents/faq-article/q9/

 

6-3. 応力腐食割れと加工・溶接時の注意

 

SUS304やSUS316などのオーステナイト系ステンレス鋼では、塩化物など特定の腐食環境と引張応力が同時に作用することで「応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking:SCC)」が発生します。これは単純に材料へ大きな力が加わって破断する現象とは異なり、材料の強度だけでは問題がなくても、腐食環境と引張応力の組み合わせによって亀裂が発生・進展する腐食現象です。

 

水処理設備では、配管の内圧や機械的な荷重だけが応力の原因になるわけではありません。曲げやプレス、溶接などの加工を行うと、外から力を加えていない状態でも材料内部に「残留応力」が残ります。そこへ塩化物を含む水や高い温度などの条件が加わると、応力腐食割れの発生条件がそろいます。そのため、配管や弁、溶接構造物では、使用する鋼種だけでなく、塩化物濃度、温度、加工履歴、構造上の応力、溶接部の位置なども設計時に確認します。

 

溶接は、応力だけでなくSUS表面の耐食性にも影響します。ステンレスを溶接すると、溶接金属とその周囲の熱影響部は高温にさらされ、表面に酸化による変色、いわゆる「溶接焼け」が生じます。酸化スケールが残った部分では健全な不動態皮膜が形成されにくくなり、腐食環境では溶接部周辺が腐食の起点になります。そのため、使用条件に応じて研磨や酸洗いなどを行い、溶接焼けを除去して表面を処理します。

 

さらに、オーステナイト系ステンレス鋼では、溶接などによって特定の温度域にさらされると、結晶粒界にクロム炭化物が析出することがあります。クロム炭化物が形成されると、その周囲では不動態皮膜の形成に必要なクロムが不足し、粒界部分の耐食性が低下します。この状態を「鋭敏化」と呼び、粒界に沿って腐食が進行する「粒界腐食」の原因になります。

 

SUS304LやSUS316Lの「L」はLow Carbonを意味し、通常のSUS304やSUS316より炭素量を低くすることでクロム炭化物の生成を抑え、溶接熱影響部での粒界腐食を起こしにくくした鋼種です。3章で紹介した「L」の違いは、実際の設備ではこのような溶接部の耐食性に関係しています。

 

応力腐食割れ、溶接焼け、粒界腐食はそれぞれ異なる現象ですが、共通しているのは、SUSの耐食性が鋼種だけでは決まらないという点です。水質や薬品、温度などの使用環境に加えて、部品の形状、加工、溶接、表面状態、残留応力まで含めて考えることで、初めてその設備に適したSUSを選ぶことができます。

 

【参考】
日本ステンレス協会「ステンレスの耐食性と腐食現象について」
https://www.jssa.gr.jp/contents/faq-article/q8/
日本ステンレス協会「ステンレス溶接の施工方法とその後の手入れについて」
https://www.jssa.gr.jp/contents/faq-article/q11/

 

SUSは、身近な生活用品から水処理設備まで幅広く使われている材料ですが、単に「錆びにくい金属」と考えるだけでは、その特性を十分に生かすことはできません。鋼種による性質の違いを理解し、使用する水や薬品、温度、荷重、周囲の材料、加工や溶接方法まで確認することが重要です。

 

水処理設備ではPVC、FRP、SS、SUSなど、それぞれ異なる特徴を持つ材料が使われています。必要な性能に合わせて素材を選び、さらにSUSを使用する場合には鋼種や加工条件まで考えることが、設備を長く安定して使用するための材料選定につながります。

 

参考文献

 

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