【専門解説】既存建物に後付けする浸水対策 ―― 止水板・浸水シャッターの役割と設計の考え方

2026年も、豪雨による深刻な浸水被害が発生しています。8月27日には富山県や石川県で線状降水帯が発生し、石川県・富山県の一部には大雨特別警報が発表されました。29日から30日にかけては福井県でも記録的な大雨となりました。

 

水害への備えは、新築時だけの課題ではありません。既存の建物で暮らしや重要設備を守るためにも、水がどこから侵入するのかを把握し、その経路に応じた対策を講じることが重要です。

 

玄関からの室内流入、地下駐車場への流入、床下通気口からの浸水など、守る場所や建物の構造によって対策方法が異なります。

 

本記事では、住宅やマンションなど既存建物に後付けする止水板・浸水シャッターを中心に、基本的な役割から、止水方式の選定、施工、水圧に対する設計、保管・運用までを解説します。

 

止水板は「購入して置いておけば終わり」という設備ではありません。非常時に取り出せる保管場所と方法、平常時の点検、実際の設置手順まで含めて防災設備と言えます。保管と設置について先に確認したい方は「5. 災害時に使える状態を保つための管理」をご覧ください。

 

目次

 

1. 建物への浸水はどこから起こるのか

 

1-1. 玄関・駐車場・通気口などから入る水

 

浸水は、河川から水があふれる外水氾濫から起こるだけではありません。

 

大雨によって下水道や排水施設の能力を超えると、降った雨を排水しきれず、道路や敷地に水がたまる「内水氾濫」が発生します。

 

地表にたまった水は、玄関や勝手口、店舗の出入口、駐車場の入口などから建物へ流れ込みます。地下へ続くスロープや、地面に近い床下通気口、吸排気口も浸水経路になりえます。

 

正面玄関だけを見るのではなく、建物の裏側や低い位置も含めて「水がどこから入るのか」を確認することが、浸水対策の第一歩です。

 

1-2. 排水管からの逆流とは対策が異なる

 

建物への浸水には、地上の開口部から水が流れ込む経路のほか、排水管を通って水が逆流する経路があります。

 

今記事のテーマである止水板や浸水シャッターが防ぐのは、玄関や駐車場などの開口部から流れ込む水です。一方、排水管から戻ってくる水には、逆流防止弁など別の対策が必要です。

 

玄関を止水板で塞いでも、排水管から汚水が逆流すれば被害は発生します。反対に、逆流防止弁だけを設置しても、玄関から流れ込む雨水は止まりません。

 

浸水経路を分けて考え、それぞれに対応する設備を選定してください。

 

排水管からの逆流については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。

 

【関連記事】
関西化工株式会社「ゲリラ豪雨・台風の被害に備える!家への汚水の逆流を防ぐ『逆流防止弁』とは?」
https://kansaikako.co.jp/information/info-water/water_blog_15368.html

 

2. 止水板・浸水シャッターとは

 

2-1. 何を守るために設置するのか

 

止水板は、建物の出入口などに設置し、道路や敷地から流れ込む水をせき止める設備です。

 

守る対象は、床や家具、車だけではありません。

 

マンションやビルでは、地下や低層階に受変電設備、給水設備、機械設備などが配置されていることがあります。

 

2019年の東日本台風では、高層マンションの地下に設置されていた高圧受変電設備が冠水し、停電によってエレベーターや給水設備などが一定期間使用できなくなる被害が発生しました。

 

特に地下駐車場は注意が必要です。

 

地下や半地下に駐車場を設けたマンションでは、出入口から大量の水が流れ込むと、車両や設備が浸水するだけでなく、地上のように自然に水を逃がすこともできません。

 

排水ポンプを備えていても、流入量が排水能力を上回れば水位は上昇します。

 

そのため地下空間では、「入ってきた水をどうやって排出するか」を考える以前に、まず「そもそも大量の水を侵入させない」という考え方が重要です。

 

2025年9月には三重県四日市市の地下駐車場で、時間雨量123.5mmの豪雨によって浸水し、274台の車両が被災しました。この被害を踏まえ、国土交通省は2026年3月、国管理の地下駐車場を対象とした浸水対策ガイドラインを策定しています。

 

住宅であっても大型施設であっても、止水設備の選定は「何を守るのか」から始めてください。

 

2-2. 既存建物に後付けできる浸水対策

 

建物の形状によって設置条件は異なりますが、既存建物でも、出入口や通気口の条件に合わせて後付けできる止水設備があります。

 

また、設置方法は製品によっても異なります。

 

工事を行わず設置する簡易タイプもあれば、床や壁へのアンカー施工、支持部材の設置などを事前に行うタイプもあります。さらに、大規模施設では、床内部に収納した防水板を起立させる常設型も使用されています。

 

事前工事が必要な設備では、製品代とは別に施工費用が必要です。また、実際の工事時間だけでなく、現地確認、見積もり、施工方法の確認、施工業者との日程調整、必要な部材の準備にも時間がかかります。

 

特に台風や大雨が増える時期は、施工業者への依頼が集中することもあります。「今週末に台風が来るので、明日取り付けたい」と考えても、すぐに施工できるとは限りません。止水設備は、雨が迫ってから準備するのではなく、出水期を迎える前など、余裕を持って導入してください。

 

施工不要の製品についても、必要になってから初めて組み立てるのではなく、平常時に一度設置しておくと安心です。具体的な設置手順や保管については、5章で詳しく解説します。

 

なお、本記事で扱う止水板は津波対策用の設備ではありません。津波が想定される状況では、止水作業より避難を優先してください。

 

3. 設置場所によって変わる止水方法

 

止水設備には一つの正解があるわけではありません。

 

開口部の幅、想定水位、壁や床の構造、通常時の通行、設置できる人員、保管スペースによって適する方式は変わります。

 

3-1. 玄関・勝手口など小さな開口部

 

住宅や店舗の玄関、勝手口などでは、比較的簡易な浸水対策でも有用な場合があります。

 

例えば、シートと止水材、土のうなどの重しを組み合わせて開口部を覆う方式があります。この方式は大掛かりな固定工事が不要で、既存住宅にも導入しやすいことが利点です。

 

一方、板状の止水パネルを左右の壁の間に設置し、幅を調整して固定する方式もあります。こちらはシート式より剛性を確保しやすい反面、設置可能な壁位置や床面の状態、固定方法を確認しなければなりません。

 

さらに、あらかじめ壁側に受け金物などを施工し、必要時に止水板を差し込む方式も一般的です。

 

小さな開口部では、単純に「間口寸法に合う製品」を選ぶのではなく、左右に壁があるか、片側だけに壁があるか、床面に段差やタイル目地があるか、扉の開閉と干渉しないか、誰が設置するのかまで確認してください。

 

床面に凹凸や段差がある場合は特に注意が必要です。止水部材と床面の間に隙間が生じれば、そこが水の通り道になります。

 

関西化工では、このような小規模開口部向けとして、方式の異なる浸水シャッターを複数取り扱っています。

 

浸水シャッター(半間間口)

シート状の本体と止水袋、土のうなどの重しを組み合わせて使用する簡易タイプです。特別な施工を行わず設置できます。

URL:https://kansaikako-onlineshop.com/product.php?id=534

 

浸水シャッター(一間間口)

左右に壁がある玄関などで使用する板状の止水設備です。左右の壁間でパネルを固定して水の流入を抑えます。設置には事前のアンカー施工が必要で、施工を依頼する場合は製品代とは別に施工費用がかかります。

URL:https://kansaikako-onlineshop.com/product.php?id=535

 

 

 

3-2. マンション・地下駐車場など広い開口部

 

地下駐車場などの広い開口部では、住宅玄関用とは異なる考え方が必要です。

 

広い開口部で可搬式・脱着式の止水板を採用する場合は、パネルを分割して一枚当たりの重量を抑え、アンカーや支持材によって水圧を受ける構造も用いられます。

 

しかし、施設規模が大きくなると、人が保管場所から止水板を運び、組み立てる方式だけでは対応が難しくなります。

 

そのため大型施設では、床内部へ収納して必要時に起立させる防水板、横方向へ移動させる防水扉、電動で起立する設備、水の浮力によって自動的に起立する設備なども使用されています。

 

例えば、浮力を利用して電源や人の操作なしで起立する大型防水板では、開口幅20m、高さ2m程度まで対応する製品も実用化されています。

 

電動アクチュエーターによって床面から起立する防水板では、大型開口部に対応する製品や、設備を起立させなくても異常を監視できる自己診断機能を備えたものもあります。

 

さらに、2026年に国土交通省が策定した直轄地下駐車場向けガイドラインでは、人力対応に依存しない止水対策を基本方針とし、水位に応じて自動的に起伏する止水板や浸水センサーの導入が示されています。

 

つまり、大規模施設では「どの止水板を買うか」だけではなく、「人が都度設置する設備にするのか、設備側が自動的に止水状態へ移行するのか」という運用方式そのものを決めなければなりません。

 

施設の規模、夜間・休日の管理体制、必要な止水高さ、停電時の挙動、閉鎖までに確保できる時間を踏まえて方式を選定してください。

 

設備の規模が大きくなればなるほど、設置コストがかかります。自動式や電動式では、導入時の設備費に加えて、その後の維持管理にかかる費用も見込んでおく必要があります。

 

関西化工では、比較的中規模な駐車場向けとして、分割式の浸水シャッターを取り扱っています。

 

浸水シャッター(駐車場用)

幅3m・5m、止水高さ0.5mの分割型浸水シャッターです。材質はPVC(スチール補強)で、各パネルを床面のアンカーボルトへ固定して水圧を支えます。設置には事前のアンカー施工が必要で、製品代とは別に施工費用がかかります。

URL:https://kansaikako-onlineshop.com/product.php?id=536

 

3-3. 通気口など見落としやすい開口部

 

止水対策では、玄関や駐車場だけに目を向けてはいけません。

 

床下通気口、吸排気口、ドライエリア、設備配管の貫通部など、低い位置にある開口部も水の侵入経路です。

 

対策方法としては、開口部そのものを高い位置へ設ける方法、周囲をかさ上げする方法、止水カバーや防水建具を取り付ける方法などがあります。

 

日本の家屋に多い床下通気口の場合は、平常時の換気機能を残す必要があります。そのため常時閉鎖するのではなく、通常は開放し、増水時に閉じる構造も有効です。

 

関西化工のウォーターシールは、この考え方をもとに設計しています。

 

通常時はストッパーによってフタを開いておき、通気を確保します。増水時にはフタを閉じ、外側から水圧がかかるほどフタが壁側へ押し付けられる構造です。

 

完全止水を目的とした製品ではありませんが、床下通気口から大量の水や泥水が流れ込むことを抑えるための設備です。

 

ウォーターシール

床下通気口からの水の流入を抑える後付け式カバーです。通常時はフタを開いて通気を行います。取付けにはアンカーの埋め込み施工が必要なため、工務店等へ設置をご相談ください。施工を依頼する場合は製品代とは別に施工費用がかかります。

URL:https://kansaikako-onlineshop.com/product.php?id=537

 

 

4. 止水設備の構造と設計

 

4-1. 「板」ではなく荷重伝達経路として考える

 

ここからは、施工・施設管理の視点で止水設備を考えます。

 

止水設備を設計する際、止水板本体だけではなく、水圧を受けた止水板から、支持材・支柱、アンカー・固定金物、壁・床・柱などの既存躯体へ、どのように荷重を伝達するのかを一連の構造として捉えます。

 

止水板本体に十分な強度があっても、支持材が変形したり、アンカーが抜けたり、既存躯体側が破損すれば設備として成立しません。

 

反対に、支持構造が十分でも、板と床、板と壁、パネル同士の接合部分に隙間が生じれば、水はそこから侵入します。

 

したがって止水設備には、水圧を支える構造性能と、水の通り道を抑える止水性能の両方が必要です。

 

大型の止水設備では、設置方法と運用方法も構造設計から切り離せません。

 

脱着式なら作業者が確実に固定できる構造でなければならず、自動起立式なら、水位上昇時に障害物へ干渉せず起立できること、起立中に人や車両へ危険を及ぼさないことまで設計条件です。

 

国土交通省も、自動止水板について設備構造と利用者安全を一体的に考える考え方を示しています。

 

4-2. 開口幅・止水高さ・水圧の考え方

 

止水板に作用する静水圧は、水深が深くなるほど大きくなります。

 

基本的には、p=ρghで表され、水面からの深さhに比例して圧力が増加します。

 

そのため、垂直な止水板には上部より下部に大きな圧力が作用します。水面から板下端までの水深をH、板幅をbとする単純な矩形条件では、板全体が受ける力はHの2乗に比例して増加します。

 

止水高さを2倍にすると、板全体が受ける水圧荷重は単純な2倍では済みません。

 

止水高さや開口幅を変更する際は、板厚、補強材、支持間隔、支柱、背面支持材、アンカー、取付躯体まで含めて再確認してください。

 

また、止水設備では破壊に対する強度だけでなく、水圧を受けた際のパネルのたわみも重要です。

 

パネルが大きくたわむと、パッキンや床との接触圧が変化し、部分的な隙間が漏水経路になります。

 

「構造的に破損しないこと」と「荷重を受けても所定の止水面を維持できること」は、別々に評価する設計項目です。

 

浸水防止用の防水扉等では、JIS A 4716に基づいて単位時間・単位面積当たりの漏水量を評価する考え方があります。国土交通省のガイドラインでも、防水扉の必要な浸水防止性能をJISの等級を参考に選定する考え方が示されています。

 

設備の止水性能、許容される漏水量、内部の排水能力をセットで判断してください。

 

4-3. 壁・柱・床への固定と既存建物への施工

 

既存建物へ止水設備を後付けする場合、既存躯体そのものが設計条件に含まれます。

 

アンカーを施工する場合は、水圧によって生じる荷重を、タイルやモルタルなどの仕上げ層ではなく、その奥にあるコンクリート等の構造躯体へ確実に伝える必要があります。

 

既存建物には、ひび割れ、欠損、仕上げ材の浮き、過去の補修箇所などが存在することがあります。下地の状態を把握し、必要に応じて補修を行ったうえで、アンカーの種類、径、埋込み長さ、配置を決めてください。

 

床面の状態も止水性能に直結します。

 

タイル目地、凹凸や段差、既設金物、排水溝などが止水面に存在する場合は、パッキンや止水部材が連続して接触できるかを確認してください。

 

必要に応じて床面を補修し、止水部材が連続して接触できる面を形成します。

 

特に駐車場入口では、排水溝や床勾配が止水ラインと交差することがあります。開口幅だけでなく、床面形状まで含めて納まりを決めてください。

 

また、止水板の左右や下部だけでなく、その周囲から水が回り込む経路も設計対象です。

 

止水板、支持部材、固定部、パッキン、壁、床を一続きの「止水面」として考え、水が迂回する経路を残さないよう納まりを決めてください。

 

既存建物への後付けでは、製品単体の仕様と同じくらい、製品を取り付ける側の建物条件が止水性能を左右します。

 

5. 災害時に使える状態を保つための管理

 

5-1. いざというときに取り出して設置できるか

 

脱着式の止水板は、必要なときに取り出し、浸水が始まる前に設置できる状態までが管理の対象です。

 

住宅用と大型施設用では必要な運用体制が異なります。

 

住宅の玄関などで使用する比較的小型な設備では、使用する本人や家族が一度は実際に設置しておくことをおすすめします。

 

どの向きに置くのか、どの部品を使用するのか、別に準備する土のうや工具はあるのか、どの程度の時間がかかるのかを晴天時に確認してください。

 

一度設置を経験しておけば、豪雨が迫った状況でも手順に沿って設置しやすくなります。

 

一方、地下駐車場などの大型設備では、必要人数、設置開始の判断、保管場所からの搬送経路、取付順序、必要工具、設置時間まで運用計画に含めてください。

 

国土交通省の地下街等向けガイドラインでも、止水設備の選定だけでなく、設置時間や人員、保管、訓練を含めた運用が重視されています。

 

保管場所は「空いている場所」ではなく、「必要時に取り出せる場所」を選んでください。

 

止水板の手前には別の荷物を置かず、搬出経路を確保しておきます。

 

止水板の上にも物を置かないでください。取り出しを妨げるだけでなく、長期間にわたって重量物を載せることで、板や付属部材の変形につながるおそれがあります。

 

鍵の所在を明確にし、必要な工具や固定部品もまとめて管理しておくと、設置時の準備を減らせます。

 

保管場所から設置場所まで実際に運び、設置できることまで確かめてください。

 

大型施設では、止水板を設置した状態で作業者の退避経路や利用者の避難経路が確保されるかも確認してください。

 

5-2. 劣化させない保管環境と定期点検

 

もう一つの保管条件は、「使うまで性能を維持すること」です。

 

特にパッキンや止水ゴムなど、ゴム製部材を使用している製品では保管環境が重要になります。

 

身近な例では、スタッドレスタイヤの保管と似ています。

 

タイヤもシーズンオフには長期間使用しませんが、保管環境によってゴムの状態は変化します。直射日光や高温になる場所を避け、次に使用する前にはひび割れや変形などを確認します。

 

止水板のパッキンとタイヤは同じ製品ではありませんが、「ゴム製品は使用していない期間にも保管環境の影響を受ける」という点は共通しています。

 

保管場所は直射日光だけでなく、夏季の温度上昇にも注意してください。

 

例えば、日陰にある物置やガレージでも、薄い屋根の下では夏季に内部温度が大きく上昇することがあります。長期間保管する場合は、こうした温度環境も確認してください。

 

つまり保管場所には、「災害時にすぐ取り出せること」と「部材を劣化させにくいこと」の二つの条件が求められます。

 

点検では止水板本体だけでなく、パッキン、止水ゴム、固定金具、ボルト、可動部まで対象にしてください。

 

パッキンの硬化、ひび割れ、変形、剥離、金具の腐食、ボルトやハンドルの固着、スライド部の動作などを確認してください。これらはすべて止水設備の維持管理項目です。

 

使用する機会の少ない設備では、外観確認に加えて試し組みも行ってください。実際に所定の位置まで取り付けられることを確認することで、部品の不足や可動部の不具合にも気づきやすくなります。

 

自動起立式や電動式では、さらに浸水センサー、起立機構、警報装置、非常用電源、制御設備、手動操作機構など、作動に関係する設備全体が管理対象となります。

 

自動式は人による設置作業を減らせる設備です。非常時に確実に作動するよう、機械設備として定期的な点検と作動確認を行ってください。

 

6. 既存建物への浸水対策の導入計画

 

6-1. 複数の開口部を踏まえた対策範囲の決定

 

既存建物の浸水対策では、止水板の商品を選ぶ前に「どこまでを守るのか」を決めます。

 

国土交通省・経済産業省のガイドラインでは、建物への浸水を防ぐ境界を「水防ライン」として設定し、そのライン上に存在する浸水経路を一体的に対策する考え方を示しています。

 

例えば玄関に止水板を設置しても、同じ室内につながる通気口が低い位置に残っていれば、そこが別の浸水経路になります。地下駐車場を止水する場合も、設備室や階段室につながる開口部まで含め、どこから水が回り込むのかを確認してください。

 

そのうえで、玄関には脱着式止水板、地下駐車場には大型防水板、通気口には専用カバーというように、それぞれの開口条件に合った方式を組み合わせます。すべての場所へ同じ止水設備を設置するのではなく、水の侵入経路ごとに適した対策を選ぶことが重要です。

 

受変電設備や機械設備など、浸水による影響が大きい設備については多重防護も有効です。建物外周で大量の水の流入を抑え、その内側にある電気室などをさらに防水扉で区画する方法も選択肢になります。国土交通省のガイドラインでも、水防ラインで建物内への浸水を抑えたうえで、重要な電気設備を防水区画として守る対策が示されています。

 

地下空間では、まず大量の水が流れ込むことを防ぎ、そのうえで残った水を排出する。この順序を意識して浸水対策を組み立ててください。

 

6-2. 日常利用まで含めて後付け工事を計画する

 

止水設備は非常時に使うものですが、床アンカーや支持金物、収納ピット、防水扉などの一部は普段も建物側に残ります。そのため、止水性能だけでなく、日常の使い勝手も含めて設置方法を決める必要があります。

 

玄関では、扉の開閉、有効幅、車いすや台車の通行も設計条件になります。駐車場では、車両動線、床勾配、排水溝との位置関係、床金物の納まりまで確認してください。

 

大型施設になると、避難経路や消防活動、荷物の搬出入も無視できません。非常時の止水性能だけを優先してしまうと、平常時の施設運用に支障が出ることもあるため、両方の条件を見ながら納まりを決めます。

 

床収納式や自動起立式を既存建物へ導入する場合は、床下のスペースも設計対象です。収納ピットを設ける位置に既存配管や配線、地下構造物がないか事前に調査します。

 

既存建物では、同じ幅の入口でも、普段の通行量や扉の使い方、車両動線などは現場ごとに異なります。日常利用まで含めて、その現場に合った納まりを決めてください。

 

施工後は、実際に止水板を取り付けたり設備を作動させたりして、計画どおりに使用できるか確かめてください。図面上では問題がなくても、実際に操作して初めて分かる干渉や使いにくさもあります。取付け時に実際の操作まで確認しておけば、その場で設置業者に調整を依頼できます。

 

関西化工では、住宅の出入口、駐車場、通気口など、設置場所に応じた浸水対策製品を取り扱っています。設置条件が分からない場合は、開口部の寸法だけでなく、床や壁を含む設置場所全体の写真とあわせてご相談ください。

 

 

 

参考文献

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